妖怪の気持ち

人型が何か言っているよ。妖怪になりたいんだって。

かいこ




つるりとまあるの月が映す


子どもに怯えて目を伏せた


それをあなたはバケモノと言う






目を背けるわたしもあなたも


飼っている、飼われている






わたしのにんぎょうを解いて


あやして


あなたにあげたい






あふれ蠢く糸くずと


ぐるぐるぐるの昏の穴






あなたが空けた針穴が


ますます裂けるのを見つめてる







あなたの子どもを


穴の中から取り出して


分解・細分化ののち


食べてしまいたい






こんなもの悪い夢だから




いいよ、もういいよ







肌に埋め込まれた糸を


一筋一筋引きながら


伝うものなど


なく、なく、なく


上半身をあなたに埋める






こんなものただの夢だから


ぼくらはただのバケモノだって


言える







そしたらぼくらは


ぼくらはさ!!






白鳥になれる


花になれる


心臓になれる


惑星になれる




どこへだって行ける


どこにだっていられる





空気にだって


部屋にだって


嵐にだってなれるし




涙にも


血にも


尿にも


ウイルスにだってなれる







君よ、君よ、君よ




弾けた紅の


眠る葵の


満天の黄の


泥雨の黒の




君よ、


君で、


あれ